仲井文明粉粒体レオロジー English

研究

粉粒体レオロジーを理論・数値計算・卓上実験を組み合わせて研究しています.

粉粒体レオロジー

粉粒体とは,一般に数十マイクロメートル以上の粒子が多数集まった物質です.土,砂,火山灰,花粉,化粧品パウダー,粉薬,小麦粉,コーヒー豆,塩,パチンコ球など,身近なところにも数多く存在します.仲井は,粉粒体の硬さや流れやすさ,壊れやすさ,混ざりやすさ,動きやすさを,物質の変形と流動を扱うレオロジーの観点から研究しています.

粉粒体は古くから経験に基づいて利用・制御されてきましたが,その多様な挙動を統一的に説明する物理学は,まだ確立されていません.粉体は離散的なマクロ粒子で構成されるため,従来の流体力学や弾性力学だけでは記述できない場合があります.また,多くの粉体系は熱平衡から遠く,平衡統計力学をそのまま適用することも困難です.そこで,対象に応じて単純で制御しやすいモデル系を考えて,現象を支配する物理機構を明らかにしようとしています.

研究手法をあらかじめ限定せず,研究課題や研究環境に応じて選びます.理論研究では主に(広義の)連続体力学・統計力学を用い,数値計算では離散要素法(Discrete Element Method,DEM)やスーパーコンピュータを活用します.さらに,センサーとアクチュエータを組み合わせた卓上実験装置の開発にも取り組んでいます.

粉体の強度と破壊

粉体結晶における転位滑り

粉体結晶中で生じる転位滑りのシミュレーション
二次元粉体結晶における転位滑り.

粉体の力学応答は,粒子の配列に強く依存します.規則的な構造は一般にランダムな充填構造より強固ですが,格子欠陥が入ると応答が変わります.粉体結晶に一つの刃状転位を導入したところ,粒子間摩擦が小さい条件では転位滑りが生じ,欠陥のない結晶より降伏応力が大きく低下することを明らかにしました.この結果は,粉体構造の強度を,原子結晶のパイエルス(Peierls)応力の枠組みと結び付けるものです.

粉体の混合と偏析

二成分粉体の粒度偏析

赤い大粒子と茶色い小粒子からなる二成分粉体のシミュレーション
薄い準二次元領域に閉じ込めて加振した大小粒子の混合系.

粒子の大きさ,質量,形状などにばらつきがある粉体混合物では,流動によって似た粒子どうしが集まる「偏析」が起こることがあります.大小の粒子を薄い準二次元領域に閉じ込めて加振すると,小粒子が少ない系では粒度偏析が生じます.一方,小粒子を十分に増やすと偏析が解消することを見いだしました.現在は,この転移を生み出す物理機構を調べています.

粒子拡散

ミクロな粒子運動は,物質輸送やマクロな流動特性を左右します.仲井は,粒子の質量や形状,周囲の環境が拡散に与える影響を,意図的に単純化したモデル系を用いて研究してきました.

棒状粒子の拡散

固定障害物の間を運動する棒状粒子
固定障害物中を運動する棒状粒子.

粒子の運動性は通常,周囲の障害物が密になるほど低下します.しかし,棒状粒子では逆に拡散係数が増加する場合があります.力学的に整合した単純なモデルを構築し,この現象がマルコフ(Markov)過程でも生じることと,その物理機構を明らかにしました.

気体系における揺らぐ拡散係数

二成分気体中の粒子拡散
二成分気体中の粒子拡散.

拡散係数の揺らぎは,一般に,高分子の内部自由度やガラスに見られる時空間的不均一性と関連付けられます.仲井らは,こうした特徴をもたない単純な古典気体でも拡散係数が揺らぐことを見いだし,数値解析によってその微視的な起源を調べました.

セメントペースト中の分子拡散

セメントペーストはミクロには不均一です.そのため,分子の拡散係数を一定とみなす近似では,気体輸送や長期劣化を十分に表現できない可能性があります.石田崇人氏との共同研究では,拡散係数の揺らぎを取り入れた分子拡散モデルを構築し,セメントペースト中の非ガウス(non-Gaussian)輸送を解析しました.

理想気体中のトレーサー拡散

静的構造をもたない理想気体でも,トレーサー粒子は複雑な運動を示します.平均二乗変位にプラトー(plateau)が現れ,強い非ガウス(non-Gaussian)運動が生じるパラメータ領域を明らかにしました.