研究対象

粉体の構造とレオロジー

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粉体は,サイズ/質量の違いや形状の異方性によって偏析/配向することが知られています. このような構造の発現機構及びレオロジーに関する研究を展開しています.

異方的な形状を持つ粒子の拡散

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棒状粒子の特異な拡散性

粒子の拡散性は粒子形状に強く影響されます. この研究では,棒状粒子特有のある奇妙な拡散現象を単純なモデルシステムを考えて理解しました. パチンコ玉のような障害物の中を運動する球状粒子を考えると,球状粒子の運動性(拡散係数)は障害物の量(数密度)が増えるにつれて動き辛くなるため小さくなります. 一方で,障害物中の棒状粒子は,障害物が増えれば増える程運動性が大きくなることがあります. この現象はDaan Frenkel教授によって1981年にシミュレーションで発見[D. Feenkel and F. Maguire, PRL 47, 1025 (1981)]されてから長らく機構はよく分かっていませんでした. 仲井は,この障害物中を動く棒状粒子の特異な振る舞いが,ある簡単な場合(マルコフ過程)でも発現することを示して,物理メカニズムを説明しました.

気体の拡散

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気体の拡散性の揺らぎ

2009年に,"Brownian yet non-Gaussian diffusion"と呼ばれる拡散現象が実験的に報告されました[B. Wang et al, PNAS 106, 15160 (2009)]. Brownian yet non-Gaussian diffusionとは,通常拡散(平均二乗変位が時間に対して一乗になる拡散)だけれども,分布関数がガウス分布にならない拡散を指します. 非ガウス性は異常拡散(平均二乗変位が時間に対して一乗以外の冪指数を示す拡散)とセットで起こると多くの研究者が考えていたため,Brownian yet non-Gaussian diffusionの発見は多くの研究者の目を惹きました. Brownian yet non-Gaussian diffusionは粒子の拡散係数が時事刻々と変化(揺らぐ拡散性,Fluctuating diffusivity)することで発現します. この揺らぐ拡散性は,時間/空間的に不均一な流体や高分子のような内部自由度を持った複雑流体において発現すると考えられていました. 仲井は,球状の気体粒子(時間/空間的に均一で内部自由度もない)でも揺らぐ拡散性が発現することを発見して,揺らぐ拡散性の新しい起源を突き止めました.

セメント中の気体の拡散

建築科学をバックグラウンドに持つ石田崇人 先生と共に実施している研究です. セメントは強い空間不均一性を持つ材料で,その中を動く気体分子の運動を揺らぐ拡散性の理論解析手法を用いてモデリングしました. セメント/コンクリート分野では,不均一な拡散を理論的に取り扱う術がなく,拡散方程式を用いてなんとか解析を実施している状況でした. 拡散方程式を使うと,空間不均一性に由来する非ガウス的な拡散を記述することは不可能で,気体によるコンクリートの劣化寿命見積もり等の精度が悪くなってしまう可能性があります. 我々は,揺らぐ拡散性の理論手法を導入して,セメントの空間不均一性に起因する非ガウス性を再現しえる解析手法を提案しました.

理想気体中のトレーサーの拡散

一般に,粒子が複雑な拡散性を示す場合には,粒子を取り囲む流体の構造も複雑です. 仲井は,理想気体という最も構造が単純な流体(質点から構成)中に粒子を導入して運動を計算したところ,ある状況下で粒子は異常拡散と強い非ガウス性を示すことを発見しました.

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