仲井文明粉粒体レオロジー English

不均一輸送 · 確率モデル

不均一なセメントペースト中の気体拡散

この研究の要点

二状態の揺らぐ拡散係数モデルによって,セメントペーストの微視的不均一性と,単一の有効拡散係数では捉えにくい酸素輸送を結び付けました.気体分子はセメント内部の速く動ける場所と遅い場所を行き来するため,単純な拡散とは異なる広がり方を示す可能性があります.

背景と問い

セメントペースト中の気体輸送は,一つの有効拡散係数で表されることが一般的です.しかし平均値だけでは,分子が動きやすさの異なる細孔や固相近傍を通る影響や,通常のガウス分布よりも長距離を移動する分子が多くなる可能性までは表現できません.

どのように調べたか

不均一な細孔環境を,拡散係数の大きい状態と小さい状態の間を確率的に切り替わる二状態モデルとして表しました.カルシウムシリケート水和物のコロイドモデルに基づいてパラメータを見積もり,酸素の拡散係数だけでなく変位分布全体を解析しました.

主な結果

既報の酸素拡散係数を妥当に記述しながら,中間的な時間・空間スケールでは非ガウス拡散が現れることを示しました.同じ平均二乗変位をもつガウス分布と比べて,変位分布の裾が重くなります.この挙動の持続時間は不均一構造の代表長さに依存し,十分長いスケールでは通常の有効拡散へ移行します.

この研究の意味

輸送の平均的な速さと,まれに生じる長距離移動の確率を分けて考えられる点が重要です.気体侵入に伴う炭酸化や鉄筋腐食,コンクリート構造物の長期信頼性を評価する際の新しい視点になり,ほかの化学種や多状態モデルへの拡張も可能です.

キーワード

セメントペースト,気体拡散,揺らぐ拡散係数,非ガウス拡散,不均一輸送.

論文情報

Fumiaki Nakai, Takato Ishida, “Gas diffusion in cement pastes: An analysis using a fluctuating diffusivity model,” Construction and Building Materials 407, 133411 (2023).